グローバルビジネスのキーワードは「違い」強みを活かした独自性の発揮と
異文化への真摯な興味という両面が不可欠


2000/03

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プロフィール
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Angus Tin(アンガス・ティン)
チューター キャピタル ジャパン
テクノロジー ディレクター

中国生まれ。14歳のとき香港に移住し、18歳で米国インディアナ州のパデュー大学に入学、コンピュータ・サイエンスと電子工学を学ぶ。卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社し、ニューヨークのゴールドマンサックスに派遣される。 1995年末渡日し、メリルリンチ経てチューター キャピタルに入社、情報システム部マネジャーより現職となる。日本在住5年。

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本文
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違いを恐れずに自分を見せることが異文化のなかで強みを活かす秘訣

 中国で生まれ、香港の英語学校で学び、米国の大学でコンピュータ・サイエンスを修めたアンガス・ティンさんは中国に籍をもつ国際人。日米中の3カ国語をあやつり、外資系金融企業日本支社のITマネジャーを務めるグローバルマネジャーだが、本人は「その時々の流れに従って面白そうなことを選択してきただけ」と気負いがない。

 大学卒業後、ほとんどの同級生がITベンチャーや大手メーカーに就職したときも、「ITはあくまでも問題解決の手段」という視点でコンサルティング企業に入社。畑違いの金融企業に派遣されることとなり、スピードが命の金融業界で最先端のITシステム技術に触れた。3年の任期を終え、赴任先のニューヨークに留まろうと新しい仕事を探していたとき、日本での仕事を紹介され、中国にごく近いアジアの一国である日本を知りたいという気持ちと「面白そう」という予感にひかれ、知人もいない、言葉も分からない、来たこともない日本へ来ることを決めた。 来日後にティンさんがまず心がけたのは、「臆病にならずに『違い』を見せ、自分 の強みをいかす」ことだった。

 「ITというスキルと外国人であるという独自性を活かし、グループに活気をもたらそうと考えました。言葉はいくら勉強しても結局日本人にはかなわない。そこである程度話せるようになったら、職場なら新しい提案をする、パーティーなら自ら積極的に企画するなど、自分にできる形でリーダーシップを取って存在感をアピールしようと思いました」

 転職を経て、チューダー・キャピタル・ジャパンに入社、東京での業務開始に伴いITマネジャーとしてシステムをゼロから立ち上げ、トレーディング環境を整えた。

 「新しい場所には新しい経験があり、新たなスキルが求められる。初めは辛いけれど成長の早さも倍で、転職はその点でも大いに役立ちました」

グローバルコミュニケーションの要は「相手を理解する心」と「伝えようとする意識」

 グローバルに仕事を進める上でティンさんが心掛けているのは、「文化の違いを理解し、なおかつ自分の強みを大切にする」ということ。異文化に真摯な興味をもつことも真のコミュニケーションには不可欠と考える。

 「日本に長年住んでいる外国人でも、言語能力には実はかなりの差がある。文化もよく知らずに来日し、友人もつくろうとしなければ、結局日本のビジネスも理解できません。相手の言うことに耳を傾け、理解しようと努める心も大切です」と語るティンさん。香港では教材も授業も全て英語の高校に通ったが、英語力が格段に伸びたのはやはり米国で毎日実際会話をするようになってからだった。

 「最初から『正しく喋ろう』などと思わずに、まずは伝えようと思うことです。技術情報は英語で発信されることが多いため最低限の読み書き能力が必要ですが、日本で大学を出た人なら10年以上勉強しているので基礎は分かるはず。会話についてはまず意識の問題だと思います。実際に話をしてみると、『長すぎる文は覚えられないから簡単な構文にしよう』など、自分の出来ることと出来ないことが分かって応用が利くようになる。まずは自分の能力を知り、それを最大限に使うようにするといいと思います」
 
自分の判断で考えて、独自の価値をビジネスにもたらす

 ティンさんがビジネスで不可欠と考えることは、慣例にとらわれず独自性を活かして仕事に自分なりの価値を付加すること。

 「いままで米国のIT企業では『日本支社はただ製品を販売すればばいい』という考えが主流でしたが、日本オラクルの元社長である佐野さんは、営業にコンサルティングとサポートサービスを加え、自社独自の価値を生み出した。外資系企業に勤務していてもあまり支社意識をもたず、本社とも上手くやり取りして自分なりの価値をつくることが大切です。米国人も中国人も韓国人も独立心が旺盛ですが、日本人の多くはなぜかリスクを避けて大会社に入り、古い慣例に疑問ももたずにビジネスを続けている。今の30代の人々が自分の頭を使って頑張らなければ、日本は世界でひとり立ち後れる恐れがあると思います」

 分析力や決断力がないと言われがちな日本人ビジネスパーソンだが、ティンさんに言わせれば、それも「能力」というよりは「意識」の問題。

 「自分で判断し、決定して、責任をもつ、つまり自己判断の意識が薄いのだと思います。決定権がないならあらかじめ上司に同意を得ておくべきです。スピードの遅れはビジネスでは致命的だし費用もかさみます。

 もちろん日本でも数多くの素晴らしいマネジャーに出会い、数多くのことを学びました。自国なりの良さをもちながら海外の考え方を理解していいところを採り入れる。ネットワークを大切にして国際的な情報交換を行い、国の将来までを考えてビジネスを行う。自らの否を正直に認める。若い人にも長期的展望や質を大切にする日本人の強みを活かし、頑張って欲しいと思います」

 豊かな経験で蓄えたスキルを活かし、地域ごとの違いから価値を生み出す発想をもって活躍するティンさん。中国が世界の一大マーケットとして注目を浴び、多くの日本企業が生産拠点を移す現在、日米中の語学力を活かしグローバルなビジネス環境で活躍する、若きビジネス・ディプロマットとしての活躍が期待される。